春の訪れ

2024.03.28

「鐘霞む」という季語があります。あれ? 遠くの鐘がかすんで見える、「花粉症」かな? 違います。春ののどかさが鐘の音をゆらゆらとかすませてしまっているように感じる、ということです。このところの天気は、むしろ「春雷」「春疾風」といった言葉の方がふさわしい感じもしますが。

ほかの季語として、「山笑う」というのもあります。草木が芽生え、花や鳥に彩られた春の山は、まるで笑っているように見えます。夏は「山滴る」、秋は「山装う」、冬は「山眠る」といいます。

さて、これらの季語は、誰かが適当に言い出しているわけではありません。それぞれの季節の天候や地理、動物、植物などをもとに、みんながそれだと納得できるものが選ばれています。季語をあつめたものを歳時記と言いました。

「鐘霞む」の鐘とは梵鐘のことでしょう。梵鐘とは、お寺にある大きな鐘のことです。仏教は538年、百済から伝わりました。聖徳太子の建てた法隆寺は有名ですね。梵鐘自体の伝来はそれに少し遅れ、562年といわれています。第二次世界大戦中、お寺の鐘は回収されて資材にされてしまい、およそ9割の鐘が失われてしまったそうです。

「花粉症」も立派な春の季語です。花粉症は、スギ、ブタクサなどの植物の花粉に対する免疫反応によって引き起こされます。花粉を検知したリンパ球が抗体を作り、肥満細胞がその抗体を元に花粉を体外へ排出しようとします。

「春雷」「春疾風」とあらわされるように、春の天候が猛烈な理由は、移動性高気圧と低気圧が交互に日本を通過するためです。特に、太平洋側に高気圧が、日本海側に低気圧があるときは、南からやってきた風が日本外側へ吹き降ろす「フェーン現象」が発生することがあります。この暖かく乾燥した風は、山火事の原因となります。

「山笑う」というのは北宋の画家・郭熙による季語です。北宋では文人画が流行し、風景を描くのが好まれました。宋代の文化としては、羅針盤・火薬・活版印刷の三大発明が広く知られています。

このように、季語は人々の生活や歴史と深く結びついています。これは教科の勉強においても同じことで、どれかひとつだけの知識で成り立つ分野というのは存在しません。それぞれの教科をしっかり学ぶだけではなくて、そのつながりも知ろうとすることによって、より楽しく勉強できるようになります。ぜひ、挑戦してみてください。

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