IH調理器と中学生の理科(夏休みの宿題のヒント付き)
2022.06.11
みなさんこんにちは。
川和町校の那谷屋です。
今回は、テスト勉強をしている中3の生徒からの質問が面白かったので、ブログにしようと思います。
タイトルでピンときた人もいるかもしれません。
問題文は簡略化してありますが、理科のワークからの出題なので、みなさんのお手元にも同じような問題があるはずです(範囲としては中2物理分野)。
【問】IH調理器で流す電流は直流と交流のどちらか。また、その理由を述べよ。
【解答】交流。磁界を変化させないと誘導電流が流れないため。
問題と解答は以上です。
たぶんこれを読んでも、何を言っているのかよくわからないのではないでしょうか。
言っている内容はわかっても、それとIH調理器がどう繋がるのかがわからないのではないでしょうか。
これは科学と日常生活が密接に結びついているという、とても唆る問題ですね(ドクスト風)。
では、順を追って考えていきましょう。
誘導電流とは?
電流が流れているところには、磁界が発生します。
逆に、磁界を変化させると電流を発生させることができます。
この現象を電磁誘導といいます。
電磁誘導によって流れる電流を誘導電流といいます。
このあたりは教科書に載っている基礎知識です。
言葉の区別は大事なのでまとめると、「現象が電磁誘導」、「電流の名称が誘導電流」です。
さて、ここで大事なのは、電磁誘導には「磁界の変化」が必要だということです。
直流だと一方通行なので磁界は発生しますが、変化はしません。
交流だと電流の方向が変化するため磁界も変化します。
だから交流である必要があります。
教科書の知識的には、磁石をコイルに出し入れすれば誘導電流が流れます。
ただ、IH調理器で磁石の出し入れって意味わかりませんよね。
なので、電流の方向を変えることで磁界を変化させているんです。
そして日常へ…
電流を流したコイル(IH調理器)の上に鍋を置くと、金属(主に鉄)でできた鍋にも誘導電流が流れます(ちょっと説明を端折っています。詳しくは後で解説します)。
しかし、鍋には電気抵抗があります。
電気抵抗とは、その名の通り「電流の流れにくさ」です。
例えば銅線は抵抗が小さい(約1.55Ω)ので電流をよく通し、ゴムは抵抗が大きい(約1000億~100京)ためほとんど電流を通しません。
ちなみに、人間の皮膚はかなり抵抗が大きいです。
ざっくりですが、乾いた皮膚だと5000Ω、濡れた皮膚だと2000Ωぐらいです。
なので、電流プールに入ってビリビリビリ!っていうのは若干フィクションが入っています。
あくまでも「若干」なので決してマネしないでください。
不足なく人体に電流を通す場合は電極を皮膚に刺す必要があります。
そのあたりは貴志祐介の『青の炎』に書かれているので、興味がある人は読んでみてください。
夏休みの読書感想文にもおすすめです。
話を戻します。
電気抵抗によって鍋に流れなかった電流は「ジュール熱」と呼ばれる熱に変換されて、鍋が熱くなります。
行き場を失った電流が熱に変化したわけですね。
すべてを捧げた部活を引退した後、その情熱を勉強に傾ける感じでしょうか。
そうやって勉強に集中する人はけっこう多いです。
文武両道って全然できるんですよ。
話を戻します。
よく「IH調理器は熱くないですよ」という話を聞くかと思います。
確かにIH調理器自体は熱くないです。
電流が流れているだけですから。
ただし、鍋は熱いです。
ふつうにめっちゃ熱いです。
気を付けてください。
以上が交流電流によってIH調理器で鍋が熱くなる仕組みです。
ちなみに、電磁誘導を利用して加熱する方法を「誘導加熱」といいます。
また、電磁誘導によって磁界が発生すると、コイル周辺に磁力線が発生します。
この磁力線が鍋底を通過するときに渦状の電流が発生します。
これを渦(うず)電流といいます(フーコー電流ともいいます)。
この渦電流が流れる際に、電気抵抗で熱が発生するわけですね。
なので、IH調理器の電流が直接鍋に流れるわけではありません。
「交流電流(IH調理器)」→「磁界・磁力線発生(IH調理器)」→「渦電流(鍋)」→「誘導加熱(鍋)」という順番です。
昔はIH調理器で使用する鍋といえば鉄でできていました。
電気抵抗の大きさがちょうどいい(約8.9Ω)からです。
最近は各メーカーが「オールメタル」のIH調理器を開発しており、電気抵抗の小さい銅やアルミニウム(約2.5Ω)の鍋でも使えるようになっています。
そもそも電流を流さない土鍋も、鍋底に金属を挟んでいる商品が発売されています。
技術の進歩ってすごいですね。
基礎が積み上がって「今」がある
私達の暮らしを豊かにしてくれている科学技術も、元を辿れば中学レベルの理科です。
仕組みを知らなければ「魔法」ですが、仕組みを知れば「知識」であり「技術」です。
このような科学技術は全国の科学館で体験しながら学ぶことができます。
興味がある人は、ぜひ行ってみてください。
夏休みの自由研究にも使えます。
「学校の勉強なんて役に立たない!」と、よく言われます。
ここまで読んでも同じことが言えるでしょうか。
「別に開発メーカーに就職しないし」というへそ曲がりもいるでしょう。
でも、そっちの道に進みたい人にとっては役に立ちます。
学校の勉強はそういうものです。
役に立たせることができる人もいます。
役に立たせられない人もいます。
どう使うかは自分次第です。
テスト勉強、がんばってください。
